太郎少年ものがたり

昔々、とりあえず明治の御維新よりも昔。
あるところに、というよりウラシマというところに一人の少年が住んでおりました
名を太朗という少年でした。幼くして両親に先立たれましたが、まっすぐに育ち、漁を生業として
くらしておったそうな。

そんなある日のこと、いつものように漁に出ようとした太郎少年(御年13才)は海辺で
なにやら子ども達が騒いでいるのを見つけました。

「やーい、頭出せよ頭?」
「ひっくり返して砂の中に体埋めちゃろう」

みると、年のころ6、7の子ども達が亀を苛めておりました

こどもは特有の可愛さだけでなく、残酷さも持っています。
このときは亀を苛めるのにその性分は発揮されておりました。

「やめなさい!!カメさんをいじめるのは!!」

「なんだよ、あんた?かめを見つけたのはおらたちだぞ。おらたちがどうしようと勝手だろう。」

「そんなことをいわずに、放しておくれ。お小遣いを上げるから」

魚心あれば水心。……もとい太郎少年の優しさにふれ、少年達は去ってゆきました
ああ、なんと優しい少年でしょう?身銭をさいてまで亀を助けるとは
こんな世知辛い世の中に咲いた一輪の花……

「助けていただき真にありがとうございました。私は竜宮に仕える……」

「今日はついてるなぁ。少しのお金でウミガメさんが手に入った。
市場にもっていけば結構な値がつくでしょうね?」

ああ無常。花は花でも棘がある花だったのでしょうか?
しかし太郎少年の生業を考えれば仕方ないでしょう
彼は漁師なのですし

「とりあえず、絞めて、血抜きをすべき?それともこのまま持っていったほうが良いでしょうか?」

太郎少年が素朴なことで悩んでいますと
亀があわてていいました。

「ぼ、坊ちゃん。やめておくんなまし。
あたしはこの地域の海を管轄している竜宮に代々仕える霊亀です。
そんなことはなさらないでください。後生ですからぁ!!」

亀も必死です。生きるか死ぬか?運命が決まるのです
しゃべる亀の存在に気づき、驚きながら太郎少年は答えました

「喋るカメさんですか?はじめてみました。
でも、僕もこれでご飯を食べて暮らしているので。そういうわけにはいかないです。
あなた、珍しいから高く売れそうですし」

当然の理屈ですが、殺られるほうにも別の見解はあります。

「私も竜宮に仕える霊亀です。お礼はいたしますからぁ」

亀、必死。つぶらな目を潤ませ、じっと見つめます

「そういわれましても……」

じっと見つめる亀。じっと……

一人で暮らしていく上で少々たくましくなりましたが元々、素直で良い子の太郎少年は
なんだかこの亀を売り飛ばすことができなくなってしまいました。なんたって喋る亀なんて初めてですし

「わかりました。でもお礼はいただきますからね?」

「わかっております。竜宮にお連れします。これでも私は竜宮の家令なんですから。

きちんとしたお礼ができると思います。さ、私の背に乗ってください。海の底の竜宮にお連れします」

太郎少年は思いました。(このカメ、私を殺す気か?)と。

「あなたがいう、恩の返し方はそれですか?
海の底なんて連れてかれたら息ができないで死んじゃうじゃないですか!!」

太郎少年の脳裏に再び亀を売り払う計画がうかんできます。

「大丈夫です。私、霊亀ですから」

何の説明にもなっていませんでした。

「どういうことです?」

殺意を押し隠しつつ太郎少年は聞きました。

「霊亀術であなたが無事つけるようにしますから」

えらい安直な名前です。でもこれで一安心です

「術が使えるならなぜ子ども達につかまったときにつかわなかったんです?」

聞かれたくないことを聞かれた気がします。助けて亀。

「水に触れていないと使えないんです。水の一族ですし、術ですから」

納得です。さあ出発。


「私が良いというまで目を閉じていてください。では、いきますよー」

「ええ」

………………

紆余曲折はありましたが、はしょって竜宮です


「もういいですよ。ここが、竜宮です。ちなみに私はここの主様の補佐をやっております。」

太郎少年が目を開けるとそこには大きな城がありました。
太郎この城を見て何かを感じたようです

少年は絵にもかけない美しさとでもおもっているのでしょうか?

(お金がかかってそうな城だなあ。期待できるかも)

……どこまでも現実向けな考えでした

そして亀になかに招き入れられると出迎えのものがやってきました

「補佐殿、お帰りなさいませ。この者は?」

「私の恩人です。丁重におもてなしを」

いきなり亀が威厳を出し始めました

すると宴を持って歓迎されているところに

鎧をつけた一人の美丈夫がやってきました。身の丈を6尺3、4寸
(今で言うところの189−192センチくらい)はありましょうか?

「他の海のものと戦っておって挨拶が後れた、すまぬな
わが補佐たるものを助けてもらったそうだな、感謝する。我は乙姫。この竜宮と東の海を統べる者だ」

なんとこの方は女人で武人で東海王でした。

それに太郎少年は答えて

「いえ。見返り目当てでしたし。お礼は言うよりも支払っていただきたいのですが」

えらく直球です。もうすこし遠まわしにお願いしたいものです。言いたいことを言わない勇気

「ふむ、ひどく正直な童よな。よかろう。誰かある。この者に褒美をとらせい」


それから運ばれてくる金銀財宝。えらく剛毅な姫様です。

「それに補佐が世話になった礼だ。御主をしばしもてなしたいのだが構わぬか?」

「ええ。こんな機会は滅多にないですし、待たせてる人もいませんし」


……………………

……………………

しばらく滞在した太郎少年がそろそろ帰ろうと、思い
暇を申し出たところ、乙姫は

「ふむ、帰るか。しかし、惜しいな、童」

「なにがですか?」

「我は主が気に入った。主がよければゆくゆくは我が夫にしたいと思うておった」

「はあ。そうですか」

「しかし、帰りたいというならいかしかたあるまい。帰るならばこの箱を持ち帰るが良い。但し開けるな」

「なんですかそれは?なんのために渡すのですか?」

「この中には御主の時が入っておる。ここはおぬしが暮らしておる
外界とは時の流れが違うゆえ、必要な措置なのだ。
其れを開けると御主は一度に加齢し、死に至る。そしてその箱はおぬしの近くにあらねばならぬ」

「時間の流れが違うなんて、そんな話聞かされてませんよ!!」

「聞かれなかったゆえ。」

「聞かなかったらこの箱のことも話さないつもりだったんですか!?」

「ああ。そうだが」

「さて、どうする?帰るのか?我としては御主が我が愛を受け入れることを望むが? お前が欲しいのだよ、太郎」 …………………………
時の流れが違うことなどを話さなかったことに少し腹はたちましたが 乙姫に悪気はなかったらしいし 待たせてる人もいるわけではないし、亀も好きだし このまま残ってもいいかなと思った太郎少年は竜宮にのこることにしました。 そして一年後。 太郎少年は軍事に才を発揮し姫の寵臣として今日も元気に策と謀をもって他の海のものと戦っています 内政、外交をを亀が、戦においては太郎少年が乙姫を助けたのです ときたま、姫に寝込みを襲われるのが目下最大の悩みらしいですが 楽しくやっているのは間違いないようです。 めでたしめでたし おしまい あとがき ちなみに当初のコンセプトはショタでした。どこを間違ったんだろう 最初は亀と少年のショタ物だったはず 矛盾なんかもおおいのでまた別に書くかなあ。基本的に構想時間がない(0、行き当たりばったり)のが問題 書き込み、情景描写もないし
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