病

「あーー……だるいわ」



「大丈夫ですか、というのは愚問ですね。お医者さんに診てもらいますか?」

奥様が風邪を引いた。正月あけてからのどうやら最近の急に寒くなったり暖かくなったりので温度差にやられた模様。
とりあえず、お布団で寝込んでらっしゃる。ヒーターとかがんがんにつけて。
あー、私にうつらなくてよかったですよ。

「いや、いいや……寝てれば多分治るし」

珍しくといったら悪いが少々、弱弱しい

「そうですか、とりあえず消化によさそうな食べ物もって来ましたから、食べられるようなら
食べてください。その方が治りが早いですし」

そういってとりあえず、お茶が入った急須、梅粥、りんごおろしと定番の桃缶を並べたお盆をおく

「……すまないねぇ、いつもごほっ、ごほん」

苦しそうに見える……日頃から考えるとちょっと不気味

「構いませんよ。これくらい」

「ち…がう」

「どうしました?」

「そうじゃなくて……すまないねぇといわれたら……」

「はぁ」

……なんだろう?またはじまったのか?

「『それは言わない約束だよ、お父っつぁん』だ!これだけは譲れない」

貴女、女性でしょうに
ほんとに病気なのだろうかこの人。いや熱があるからこうなのか?

「そうですか。そこまで熱が回ったんですね……お医者さんのところに行きましょうか」

うう哀れですね……

「私は大丈夫だから」

「病人は大抵そういうんですよ、奥様」

「いや、ほんとに。でも真面目な話、貴方には悪いと思う」

「そうですか?」

「うん。仕事休んで看病してもらってるからねぇ」

「そういうことを気にするなら早く治してください」

「だって、けっこう忙しそうにしてるときに急に休ませたからねぇ……」

いつになく弱気系発言……慣れないです。

「それなら早く元気になって、もし私、給料減らされても、というよりも首になっても
養えるぐらい稼いでください」

いいですよね、ひも人生。ま、あこがれるだけですけどね?
相手に依存しきったら相手がさまざまな理由でダメになったとき怖いじゃないですか!
愛がさめたときとかはさらに考えたくありませんが。


「……病人に言う台詞じゃないでしょう、それは」
荒く気を吐きながら苦しそうに言う奥様。そうですかねえ?叱咤激励では?

「でも私が、かからなくてよかったですよ」
しみじみ私が首を振りながら言うと

「なによ?それ、苦しみは分かち合うもんじゃないの、神父いわく。幸福は8割ほどもらう・・ごふごふ・・」
奥様が軽く怒りて、変なせきしながらおっしゃいます。
それは・・・どんないいぶんですか。

「えーその台詞はさらっと無視してですね、貴女のお世話ができるからですよ。苦しいときの貴女のお世話ができて
あなたの違った一面も見れる。幸せですよ?あなたが苦しいのは少しアレですが。たまにはいいでしょう。」

「あー、そうですか。」


「はい。そうです。なので遠慮なく。」

「うむ、苦しゅうない。ちこうよれ。」

「はい?」

唇を奪われました


「明日はお前が苦しむ番ですよーだ」

「まったく、子供ですか、あなたは」

顔をたぶん熱のせいで赤くしながら言う貴女。こういうのも悪くないかもしれないと思う私。
そんななんでもない、けれど幸せな冬の一日










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