月5日  晴れ
今、私は保護者の人に勧められて日記を書いている。
厳密に言うと書いているのではなく打っているとか言うのだろうけど、まあ、いい。

あの日ナデシコが軍に徴集されてから色々あった。みんなにも色々あったみたいだけど

わたしにとって一番大きかったのは「新しい保護者の人」ができたことだろうか。いままでにもいたけど

いままでとはずいぶん違ったものになりそうだ。

少しあのときのことを思いだしてみる

「……以上の事柄からネルガルは本人の同意なく、死の危険ある、この船に乗せたものだと思います。」

「異議あり!!彼女は納得して乗ったのだ!」

「そうですか?親権を買われた事を彼女は知っていました。それで抵抗して無駄だと思ったのでしょう。」

「異議を却下します」


「さて、判決を言い渡します。ネルガルからホシノ・ルリに対する親権の剥奪および罰金………」


裁判は終わったようだ。なんか他人ごとのように思う。これで一応は自由になった

でも、すぐ徴用されてまたあの船に乗ることになるらしい

こどもを戦艦に乗せることを虐待で訴えたはずなのに

戦時特例だって。馬鹿ばっか。

ま、お金はそこそこはあるけど、一人でずっと暮しいけるほどじゃないし

そもそもどうやって暮らしていけばいいかわからないからそれも別にかまわない。

でも、「新しい保護者」がつき、引き取られることになるらしい。徴用のことを伝えにきた人が言ってた。

一緒にあの船に乗る人。今はその人の家に向かっている。

まったく知らないひとではないけどご苦労なことだ。




着いたけど……なんかかるく鬱。まぁいいとりあえず、入ろう

ピンポーン

「ホシノです。お役所のほうから言われてきました。」

「どうぞ、鍵は開いてるからあがって。」

「はい、お邪魔します」


入って視界に飛び込んできたものは三角巾とエプロンをつけた……あたらしい保護者だった。

「予想してたより結構早かったわね?まぁいいわ、そこらでくつろいでて。もうすぐご飯できるから」

「はぁ、わかりました」

なんか意外。変に似合ってる気がする。違う。
似合ってるのが変なんだ。そんならちもないことを考えてると



「できたわよ?さ、すわって。見た目は悪いやつが多いけど
  結構いけるわよ。ま、無理だったらいいけど」

「はぁ」

確かに見た目は悪い。でもなにか惹かれるにおいがする。
たべてみる。……なんかいい。どれも今までお気に入りだったハンバーガーより好きだ。
黙々と食べる私。静かに食べていた保護者が話しかけてきた。


「気に入ってもらえたようね?戦場で覚えた料理だから見た目は悪いけど味と匂いはましでしょ。
  ま、戦場で作ったときと比べれば味や匂い、見た目もだいぶいいんだけどね」

「あらためて、自己紹介するわね。これからアンタの保護者になる、ムネタケ・サダアキよ」

「ホシノ・ルリです。よろしく」

「本当はあんたみたいな小さな女の子でも一応男であるあたしが
引き取るべきじゃないのかもしれないけどナデシコに乗り込む軍人で
それなりの階級を有する人間てことだったから。ま、よろしく」


一応って…

「提督はやっぱり男の人が好きな人なんですか?」

「違うわよ?そう見られることは多いけど。」

意外。そうだと心配が要らなかったんだけど


「心配しなくてもアンタ位の子に手を出すことはないわよ?
ま、心配ならあの船に乗るまでは部屋に錠でもつけときなさい
  後、あたしはもう提督じゃないわ。 厄介払いで艦長として乗ることになったから。 」

「厄介払い、ですか?」

「そうよ?アタシ、嫌われてるし。アタシが有能になっちゃったからねー?」

「有能になった……ですか?」

「ええ。アタシ、少佐になるくらいまではお偉いさんであるパパのコネとおべっかであがってきたもの。」


…………何かすごいことをさらっといわれた気がする。


「実際、軍に入ったのだって完全な自由意志ってわけじゃなかったし。
コネとおべっか使って勤め上げるつもりだったんだけど
火星で勤務してしばらくしたとき、蜥蜴がきちゃったからそんなわけにもいかなくなったの。
で、死にたくはなかったから、必死こいて、頭使って生き延びて。
そしたら、使ってなかっただけで能力はあった見たいでね?
そこから結構な速さで功を積み上げて、少佐になってから5年で中佐だったけど
それから5ヶ月で大佐になったわ。で今にいたると。」


なんか嫌われている理由を言ってない気がする。


「で、どうして有能なのに嫌われるんですか?」

「ああ、話がそれちゃったわね。一般的なのは階級的高さ。嫉妬するからね。
ま、これはアタシの場合はすごく少ないわ。いままでさぼってたから
階級的にはそんなに高くないし。一番大きいのは今まで無能だと思って
侮蔑してた人間が自分より有能だってこと。
そんなことをすんなり納得できるような人間は少ないわ。大概は反感や不満を持つ。
あたしだって大勢の人に好かれるような人間でもないしね」



「はぁ……」

なんと言ったらいいやら。馬鹿ばっか?

「ま、船から下りるまでの暫定的な保護者になるだろうけど改めて
ワタシ、ムネタケ・サダアキ、コンゴトモヨロシク。ホシノ」

妙な口調で言う保護者。まぁ、とりあえず。


「今後ともよろしく。父」

「それはやめて」

父が頭を抑えている

男性の保護者にはこういうものだと思ってたけど。



……………
あのあと、「ムネタケさん」で呼ぶことに合意。

そんなこんなの生活で一週間になった。

軍に徴収されたナデシコがどんなあつかいになるかは知らないけど、なるようになるだろう
できれば楽だといいけど。

「……今日の分はこれで終わり。お休みなさい」

眠る







続くといいな






続くといいな
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