うだるような暑さの季節にに差し掛かりかけた6月14日
天気は快晴。まったく人の気持ちを察せないやつだ。
そんな意味のないことを考えながら歩く。
目的は家から近くの喫茶店。明日に迫った結婚式式を前にして
お姉ちゃんとその結婚予定者と会う。会いたくないけど、会いたいから。

そんなことを考えてながらてくてく歩いていると近所の喫茶店「バルス」に着いたので店内に入る。
待ち人たちと軽い挨拶を交わし、ティーソーダを注文する。

確かこの店は、地元タウン誌のデートスポット人気ランキング1位だそうだ。
以前、母に連れられてやってきたことがある。
1500円くらいで結構おいしいお昼が食べられるちょっと、お洒落なお店。セットのデザートがおいしかった。
まぁ、母と私以外は恋人か夫婦、、合コン客で私たちは浮いていたが。

次は好きな人と来たいな、と高校生にとっては少し高いデートコースを夢想していた。
しかし、なかなか実現せず、実現したかと思えば嫌な形になっているようだ。
姉とその婚約者と話しつつ至極どうでもいいことに思いをはせて、気分をまぎらわせていた。
とりあえず、今日一番言いたくない台詞をさっさと言っておくことにしよう。

「おめでとう。二人ともいよいよ明日、結婚式だね」

……自分がいやになる・・・わけでもなく、偽りの祝福を口にだす。
こんなこと、もう慣れた。何回、好きな人がほかの人と付き合っていくのを見ただろう。・・・3回目か
しかし、ここまでのきついのは初めてだ。

「ありがと、紅葉」

「ありがとう紅葉さん」

心にもない祝福に、たぶん心のそこからの笑顔になる姉と照れながら礼を言う義兄予定者
とりあえず、それを見て、萌える。流石だ、我が惚れた人。


「楓さんなんて他人行儀な呼び方しないで、これからは義妹と呼んでね。お義兄ちゃんと私の仲でしょう?
明日、お姉ちゃんと結婚するんだから。明日が楽しみだね?」


……本心でもないことを言っている。
明日になんかならなきゃいいのに。

姉が、お姉ちゃんが明日、結婚する。私はそれが嫌でたまらない
お姉ちゃんが嫌いなわけでも、その相手に不満があるわけじゃない
あの変わり者が好きになれて、結婚したいとまで思う相手なんだから。
そう言って両親は喜んで祝福していた
……たぶん一生一人身を通すと思っていたのだろうから
私自身も穏やかなその男の人のことを、客観的に見ればよい人物だろうと思う。
だからお姉ちゃんの相手に不満があるわけではない。

……いや不満があるとしたら、相手としてお姉ちゃんの隣に私が立てないことだろうか?

私は、姉が、お姉ちゃんが好きだ。恋愛感情なのか親愛の情が行き過ぎたものかはわからないが
お姉ちゃんが離れてゆくのがたまらなく嫌だ。世間から見れば異常。
自分でもそう思うが好きなものは好きだからしょうがない仕方ない
だから結婚が嫌で仕方がないんだ。そうわかっていても何の得もないけど
ただずっと一番近かったのは私なのだ。なら、その私がどうして手に入れられないのだろう。
一番近くで、一番近い相手なのに。

あーあー・・・明日になんかならなきゃいいのに……


「お義兄ちゃんが考え直す最後の機会かもしれないから、全部話しておこうか?お姉ちゃんの駄目なところ」

冗談めかして笑う私。わかれてしまえばいいのに。むしろ、別れろ。
傷心のお姉ちゃんは私に任せろ。

「それは困るわ。私は彼を愛しているから。色々とあるでしょうけど言わないで欲しいな」

「……大丈夫ですよ。あなたの変わったところもずいぶんみてきましたから。受け入れられますよ。たぶん」

困ったように微笑む姉とあったかい笑顔で姉を見つめる義兄予定者。

「ふふふ、貴方は愛してますものね、私を」

「ええ、貴女を愛していますよ」

二人でいちゃつきはじめた。世界は二人のためにだけまわるってか、おめでてーな。見るに耐えない。
その人に一番近いのは私のはずなのに!! 隣にいるのはずっと私だったのに
店員さんにおかわりの紅茶を頼む。やりきれない



私だけがいらだたしい感じられる時間。
いちゃつきが一段落したのか義兄となる人が話しかけてきた


「紅葉ちゃん、これからちょっと用があるから僕は失礼させてもらうよ。」

「あ、私は時間があるから結婚前の最後の日、お姉ちゃんのために一緒にすごしてね。」

喜んで貴女といよう。
私にとってはやや望ましい展開だ。これで兄となる人が姉と別れる気にになってくれたりなんかすると
最高なのだが。

「わかりました。じゃあ、お姉ちゃん今日はよろしくね」

「ええ。よろしくね」

そうしていろんなことを話した。昔のこと、恋のこと、結婚しようとおもった理由なんかも
私にとってつらいこともあったけど、お姉ちゃんと過ごす時間は楽しかった。


でもおねえちゃんは明日、結婚する。正確には11時間後挙式開始。

・・・・明日になんかならなきゃいいのに。

明日なんかいらない。


 
そんなことを考えても明日は来るわけで。
まぁ当たり前なのですが。そうして花嫁控え室で結婚前の姉と最後の二人きりですよ。
映画みたいにさらって駆け落ちとかできたら素敵ですが、ありえないわけで。
昨日からずっと泣いてて私は顔が7割り増しで不細工で。
こんなときくらい、好きな人には綺麗な私を見て欲しいのに。
そんなことを考えながら仕度をするお姉ちゃんをみてた。
 ・・時間だ。昨日からあっためていた言葉を言おう。




「一つだけ……お願いがあります。時々で……いい、から……っ……私のこと、思い……出してください」
泣きながらそういった。

「あらあら、涙をふいて。他の国にいるわけじゃないし
「お姉ちゃん、モリモリと紅葉のこと思い出すよ。紅葉は私の妹なんだから」


本当は違う言葉が言いたかった。
でも言えなかった。臆病でかしこいな判断

                     貴女が好きです、家族としてじゃなく性的な意味で。
                     あなたに恋をしています。


END













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